2006年度 よもやま話の会

2007年5月18日(金) 小島 正明 氏 マッチングプログラムコース:自分探しの旅
2007年4月16日(月) 守屋 益男 氏 山の魅力と登山の楽しさ
2007年3月12日(月) 菅野 正之 氏 "格差社会"を生きる若者たち;フリーター選択の構造と過程
2007年2月9日(金) 松木 武彦 氏 イギリスの遺跡探訪-ユーラシア両端の比較考古学-
2006年12月18日(月) 渡部 昭男 氏 格差問題と「教育の機会均等」-教育基本法「改正」をめぐって-
2006年10月26日(木) 山田 豊文 氏 生活習慣病社会を勝ち抜くための最新栄養学の話 -日本の栄養学は間違いだらけ-
2006年9月26日(火) 白井 浩子 氏 エコロジカル・フットプリント-生態系はどれだけ生産し人間はどれだけ消費しているか-
2006年6月27日(火) 山本 晋 氏 森林生態系の炭素固定の仕組み-森林における炭素収支野外観測から分かったこと-
2006年5月19日(金) 近藤紗智子 氏 瀬戸内海における海砂利乱掘による漁業環境破壊と国の資源認識

2005年度 よもやま話の会

2006年4月18日(火) 鈴木 久雄 氏 健康づくりのための運動・ちーとやってみられ
2006年2月13日(月) 市川 浩 氏 核・環境・科学者,そして現代の若者-教育実践からの感想的覚書-
2006年1月11日(水) 松岡 健一 氏 公害死亡症例は訴える-「公害死亡患者遡及調査」より-
2005年11月21日(月) 金原 和秀 氏 微生物を用いた塩素化芳香族化合物の分解とその応用
2005年10月25日(火) 永田 諒一 氏 西洋史学としての<歴史気候学> -研究の現状と課題-
2005年9月9日(金) 加藤 内藏進 氏・加藤 晴子 氏 日本の異常気象および気象と音楽との関わり
2005年7月13日(水) 林 昭 氏 樹状細胞療法第1号のがん治療としての有効性
2005年6月13日(月) 酒井 貴志 氏 人と自然にやさしい化学のモノ創り
2005年5月19日(木) 有吉 英樹 氏 義務教育未修了者の「教育を受ける権利」の保障について

2004年度 よもやま話の会

2005年4月22日(金) 高原 周一 氏 どうすれば大学生に成長してもらえるのか?-理科系教育に対する大学教員の模索-
2005年3月15日(火) 岡 剛史 氏 ベンチサイドからベッドサイドへ-基礎医学研究から癌の早期発見・診断・予防に向けて-
2005年2月14日(月) 松本 直子 氏 考古学で解く古代の心
2005年1月17日(月) 甲賀 研一郎 氏 水と氷と油の統計力学
2004年11月8日(月) 衣笠 哲也 氏 ロボットをつくる -ロボットって何?,アニメにみるロボット,今の技術にできること-
2004年10月26日(火) 沈 建仁 氏 酸素を作り出す植物の仕組み
2004年7月13日(火) 岡崎 好秀 氏 謎解き口腔機能学:キンさんギンさんは,歯がないのにどうして長寿を得たのか?
2004年6月14日(月) 進藤 明彦 氏 スーパーサイエンスハイスクールの取り組みと大学との連携について

2003年度 よもやま話の会

2004年3月15日(火) 和田 寿博 氏 学びの一歩から自立の一歩へ-大学で学生が主人公になる事例と工夫の紹介-
2004年2月10日(火) 津田 敏秀 氏 疫学と蓋然性と,医学における因果関係-医学ニュースから環境問題まで-
2003年12月2日(火) 河野 和男 氏 キャッサバ育種から見た世界の植物遺伝資源の利用と濫用
2003年10月9日(木) 中西 卓 氏 エネルギーの未来を考える-太陽光発電・市民共同発電のレポート-
2003年9月1日(月) 新納 泉 氏 & 今津 勝紀 氏 人口が語る新しい古代史
2003年7月7日(月) 岸田 芳朗 氏 総合技術としての合鴨農法の魅力

マッチングプログラムコース:自分探しの旅
小島 正明 氏 (岡山大学理学部・マッチングプログラムコース担当)

5月18日(金)
 マッチングプログラム・コース(MPコース)は、2006年4月に全学の新構想教育プログラムとしてスタートしました。今年4月、個性的で元気あふれる16名の第2期生を迎えました。
 従来の学部・学科に所属する学生とは異なり、MPコースの学生は自らの力で道を切り拓いていかなければなりません。これを、彼らは「自分探しの旅」と表現しています。
 MPコースの過去・現在・将来について、以下のお話しをしていただきます。
 MPコース設置の背景/入試/入学前教育/教育の特徴/課題研究(卒業研究)/進路・将来像


山の魅力と登山の楽しさ  
守屋 益男 氏 (日本勤労者山岳連盟会長)

4月16日(月)17時30分〜18時40分

現在、「日本勤労者山岳連盟会長」の守屋益男さんに、地球規模の、時空を股に掛けた、下記のような内容の興味深いお話をしていただきます。
1)人はなぜ山へ登るのか  
人間の自然志向性/人間の運動志向性/生活の裏にある自然の法則を確認する喜び/登山の持つ多面性、総合性の魅力/人間の権利としての登山
2)地球上にはどんな山があるか
岡山県の山/近県の山/日本百名山/世界百名山
3)登山で感じた環境問題
地球の大気/地球温暖化/公共事業による自然破壊/
山の汚染/クリーンハイキング
4)その他


“格差社会”を生きる若者たち;フリーター選択の構造と過程
菅野正之 氏(広島大学大学院社会科学研究科)

3月12日(月) 17時30分〜18時40分

 本報告では、“格差社会”現代日本を生きる若者たちの、とりわけ「フリーター」と呼ばれる若者たちがおかれている状況を、調査データに基づいて明らかにしていきます。
 具体的には、①高校生を対象として行った質問紙調査より、高卒後の進路として「フリーター」を“選択”する若者たちの姿を描き出し、②実際に「フリーター」として職業生活を送る若者たちを対象とした調査より、「フリーター」という職業生活の不安定性を描き出すことを通じて、③彼/彼女たちがおかれている社会的状況を「社会的排除」として認識する必要性を指摘します。


イギリスの遺跡探訪-ユーラシア両端の比較考古学-  
松木 武彦 氏(岡山大学文学部)

日時:2007年2月9日(金)17時30分~18時40分
場所:岡山大学文学部1号館会議室(エレベータを3階で降りてすぐ前)

 イギリスの新石器時代・青銅器時代・鉄器時代の主要な遺跡を写真で紹介しながら,日本列島とブリテン島の先史社会を比較して,その共通性と個性を明らかにします.また,両国の考古学の研究法の違いやその背景にも言及し,両者の協調の可能性を展望します. 紹介するおもな遺跡は,ストーンヘンジ(世界遺産),オークニー諸島の新石器時代遺跡群(同),イングランド南部の巨大ヒルフォート(丘上防塞)などです.


格差問題と「教育の機会均等」-教育基本法「改正」をめぐって-  
渡部 昭男 氏(鳥取大学 地域学部・地域教育学科・発達科学講座)

日時:2006年12月18日(月)17時00分~18時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階 第3講義室

 ○現行[教育の機会均等]条項の真髄-第1項:「経済的地位」による教育上の差別禁止- 現行の教育基本法は日本国憲法と一体であり,「準憲法的性格」をもっていますが,日本国憲法には無いのに教育基本法には有るものが幾つか存在します.例え ば,第4条[義務教育]の「9年の普通教育」や「授業料の不徴収」は,日本国憲法第26条の「普通教育」「無償」規定について,範囲を明示して一定の限定 を加えたものです. 一方で,日本国憲法の精神を補強した条項もあります.それが,第3条[教育の機会均等]です.具体的には,日本国憲法第14条にはない「経済的地位」を明 記し,教育上の差別禁止を求めています.もちろん,事由に挙げられていなければ差別が許されるというわけではないのですが(例えば「障碍」による差別), あえて事由に明示した意味は大きいのです.「格差問題」が大きな争点となっている今,とりわけ差別禁止事由として追記された「経済的地位」による教育上の 格差・差別の存在とそれへの対応が“徹底的”に問われなければなりません. ○現行[教育の機会均等]条項の課題-第2項:「能力」規定の削除を- 第1項を受けて,第2項では「経済的理由」による修学困難者への国・地方公共団体の「奨学の方法」を講ずる責務が規定されています.注意すべきは,「修学 (学を修める)」は「就学」よりも広い概念であり,また「奨学の方法」も「奨学金」に留まらない多彩な施策であるべき(授業料の不徴収,寄宿サービスの提 供,修学費の無償化など),ということです.ところで,現行法は「奨学」の対象について「能力がある」者としています.これは,「成績優秀者」というよう に悪用されてきましたが,本来的には「修学する能力がある者(経済的困窮者)であれば誰でも」の意味です.真の意味で「改正」というのなら,第2項の「能 力」規定は削除すべきなのです. ○真の意味の「改正」になっていない法案は廃案に! [教育の機会均等]原則にかかわって,政府案も民主党案も,真の意味での「改正」にはなっていません.廃案にする一方で,世界人権A規約に基づく「高等教 育の漸進的無償化」に踏み出すべきでしょう.なお,私としては,歴史の発展方向としては「能力」原理から「必要」原理への転換を展望し,志向しています. 詳しくは『格差問題と「教育の機会均等」』 http://www.nipponhyojun.co.jp/sinkan/nhbook03_kakusa/index.html(学習会当日にも販 売予定)をご覧下さい.


生活習慣病社会を勝ち抜くための最新栄養学の話-日本の栄養学は間違いだらけ-
山田 豊文 氏(杏林予防医学研究所所長,倉敷芸術科学大学生命科学部健康科学科講師)

日時:2006年10月26日(木)17時00分~18時40分
場所:岡山大学農学部1号館1階第1講義室

 日本は世界でもトップクラスの長寿国で,日本の伝統的な食事がその中心にあると言われてきましたが,現代の日本はどうでしょうか.日本人のおよそ 3分の2が,食生活の乱れが大きな要因で起こる脳卒中・糖尿病・心臓病・数種のガンなどの生活習慣病で亡くなっており,そうした病気の前兆となる肥満を引 き起こすような食品が町中に溢れかえっています.食の欧米化に伴い,栄養価の高さや質よりも利便性や口当たりの良さ・日持ちなどを優先したコンビニ食品・ インスタント食品・ファーストフードをはじめとする精製加工食品がどんどん増えており,そうした食品の多くは本来必要のない余分な油や添加物・保存料が加 えられています.その結果,量はそれほどでもないのにカロリーばかり高くて栄養価が低い「空のカロリー」と呼ばれる食品ばかりになってしまっています.ま た,環境汚染や農薬の影響で,本来土壌にあったミネラルは枯渇し,昔と同じ種類や量の野菜を摂取していてもビタミン・ミネラルが取りにくくなっているのも 現状です.何のための食事なのか,誰のための食事なのか,今一度,一人一人が考え見つめ直す必要があります.


エコロジカル・フットプリント-生態系はどれだけ生産し,人間はどれだけ消費しているか-
白井 浩子 氏(岡山大学大学院自然科学研究科・附属臨海実験所)

日時:2006年9月26日(火)17時30分~18時40分
場所:岡山大学農学部1号館1階第1講義室

 人間も生物なので,衣食住から経済活動に要るものはすべて,つまるところ,生態系からの恵みに依存しています.生態系の復元能力(利子分)内で暮 らさないと,人類は未来に存続できません.人間の活動量は,生態系の生産能力に比べて多いか少ないか.経済学と生態学の共同研究が進んで,このことを総括 的に捉える事のできる算定法が開発されました.「生態系の生産量」も,「人間に依る消費量」も,光合成を基礎とする面積に換算するのが最も根本的・合理的 で簡単です.人間の活動は,生態系からの恵みを消費する(=収奪する=生態系活動の場を占有する)という意味で,「地球踏みつけ面積」=「エコロジカル・ フットプリント」として算定できるようになりました.そして,明らかになったことは,「人類全体の活動総量が1970代半ばで地球1個分を超えた」ことで した.1999年では世界で1.4個分です.つまり,人間による1年分の消費を,生態系は1.4年かけて復元するということです.今すでに,世界の総量と しては,エコロジカル・フットプリントが地球1個分を超えているのですから,活動の総量をどうしても減らさなければなりません.あたかも食事の量をカロ リー単位でおよそ計れるように,私たちも暮らしぶりについてエコロジカル・フットプリントをどれだけ占めるか計れるように慣れていきましょう. 


森林生態系の炭素固定の仕組み-森林における炭素収支野外観測から分かったこと-

山本 晋 氏(岡山大学大学院環境学研究科)

日時:2006年6月27日(火)17時40分~18時50分
場所:環境理工学部棟4階総合演習室422

 京都議定書において,森林をCO2削減手段として取りこむことが規定された.この京都議定書がロシアの調印により2005年2月に発効したことを 受けて,炭素吸収・固定における森林生態系の役割を定量的に評価することが緊急な課題となっている.また,CO2大気濃度の将来予測において,森林生態系 の炭素収支での役割の解明が不可欠である.ここでは東アジア地域における各種森林での炭素収支の野外観測結果の解析に基づき,炭素収支の季節変化の樹種に よる特徴,年間炭素吸収量の年々変動などを解明し,気温・降水量など環境条件との関係のモデル化を試みた.本講演では,これらの結果を紹介するとともに, 森林の炭素固定対策としての利用可能性と残された課題についても考えたい.


瀬戸内海における海砂利乱掘による漁業環境破壊と国の資源認識

近藤紗智子 氏(岡山大学大学院環境学研究科・社会基盤環境学専攻)

日時:2006年5月19日(火)17時30分~18時40分
場所:岡山大学農学部第1講義室(農学部1号館1階南側)

 1997年広島県で,海砂利採取の全面禁止をめぐる贈収賄事件が発覚しました. その捜査の過程で,海砂利の乱掘(採取許可量の2~4倍の採掘)が明らかになり,社会問題化しました.その後,海砂利採取を許可していた岡山県・香川県・ 広島県による採取許可海域の環境調査が行われた結果,海底の海砂利は採り尽くされ海底は荒廃し,今後の瀬戸内海漁業に大きな影響が危惧され,生態系への影 響も考えられるという報告がなされました.そこで,演者は,環境破壊が起こるまで採掘が止められなかったのは何故か,その原因は海砂利の資源としての管理 や許可システムの問題では,と考えて調査しました. 本講演では,わが国の環境政策には,自然の価値が評価されない問題と,自然資源の所有権の問題があること,その根本的要因は国の資源認識と自然開発の許可 システムの問題であることを,海砂利採取という具体的例を通して明らかにした結果について話されます.


健康づくりのための運動・ちーとやってみられ

鈴木 久雄 氏(岡山大学教育学部)

日時:2006年4月18日(火)17時30分~18時40分
場所:岡山大学農学部第1講義室(農学部1号館1階南側)

 現在,日本人で週2回以上運動している人は約3割です.米国では週3回以上散歩など比較的軽い運動(中等度運動)ときつい運動・スポーツを行って いる人は4割弱います.日本の基準の方が低いにも関わらず,日本人がいかに運動していないかよく分かると思います.岡山人は日本人平均より,さらに少ない ことがわかっています.この講演では,どのくらい運動すればよいか,何をするとよいか,自分で もできるという運動を見つけて,日頃から運動していただき,より元気のある科学者になるようにお話させていただきます.


「憲法九条フォーラム in 岡山」プレシンポジウム.核・環境・科学者,そして現代の若者-教育実践からの感想的覚書-

市川 浩 氏(広島大学総合科学部)

日時:2006年2月13日(月)17時30分~18時40分
場所:岡山大学農学部第2講義室(農学部1号館1階南側)

 近年,かつての機密資料が,さまざまに制約を持ちながらも解禁・公開されてくるに伴い,第2次世界大戦,およびその直後の時期に各国で進められた 原爆開発計画に新しい研究の光が投げかけられるようになってきました.言うまでもなく,原子爆弾の開発・製造は膨大な量の資金,研究資源と生産資源が軍事 目的ないしは準軍事的目的をもつ国家プロジェクトに恒常的に費やされるという,”冷戦型科学・技術体制”の濫觴(らんしょう)ともなった,科学史・技術史 上の卓絶した経験であります.
 演者は,広島大学の教養的教育科目「現代技術と社会」を担当され,各国の原爆開発計画を俎上にのせていくつかの論点に沿って検討を深めるかたちで,授業 を展開されています.本講演では,演者の授業の内容にそって,初期核開発史研究の現状と課題,および特徴的な学生の反応などを紹介されます.
 なお,「憲法九条フォーラム in 岡山」は,来る2006年3月10日(金)14時より,岡山大学五十周年記念館会議室で開催されます.教職員,学生,市民の方の多数のご参加をお待ちしております.


公害死亡症例は訴える-「公害死亡患者遡及調査」より-

松岡 健一 氏(水島協同病院名誉院長)

日時:2006年1月11日(水)17時30分~19時00分
場所:水島協同病院2F講堂(岡山県倉敷市水島南春日町1-1)

 13年間の長期にわたった「倉敷公害裁判」は,患者側の勝利的和解により事態の収拾が行われました.この間の経過について,医学論争,裁判闘争についてはまとめがなされましたが,より詳細な医学的な総括は宿題として持ち越されてきました.
 今回出版された「公害死亡患者遡及調査」では,1976-2000年の間に不幸にして亡くなられた501名の患者の,闘病の足跡を医学的に整理したもの として,重要な意義を持つものです.本書では,主として1)死亡された公害患者さんがいかに苦しみながら病と闘ったか,その実態を医学的資料により明らか にすること,2)現在も日々闘病生活を強いられている多くの患者さんの治療と療養援助に役立つ課題を追求すること,3)医学的資料に基づいて公害患者並び に地域社会の受けた損害の実態に迫ることを目的に調査が行われました.この調査を元に明らかになった点と,今後の課題について解説していただきます.同時 に,公害問題の解決に関しては,公害患者さんこそ重要な提言者・偉大な道案内であるという考えに立ち,亡くなられた公害患者さんの訴えを医学の言葉で世に 表した本書の意義について,説明していただきます.


微生物を用いた塩素化芳香族化合物の分解とその応用

金原 和秀 氏(岡山大学資源生物科学研究所)

日時:2005年11月21日(月)17時30分~18時40分
場所:岡山大学農学部第1講義室(農学部1号館1階南側)

 現在,環境ホルモンに代表される環境汚染物質は私たちの生存さえ脅かそうとしています.しかし,地球上に無数に存在する微生物のなかには,それらの環境汚染物質を分解し地球環境を浄化するものが多くいます.
 ここでは,環境浄化に貢献する微生物に関する研究の現状を,環境ホルモンの一種である塩素化芳香族化合物を分解する微生物の研究を中心に,基礎から実際の応用まで述べるとともに,その能力を遺伝子操作などの手法を用いて強化する研究も含めて概説します.
 なお,本講演会は岡山支部農学部班との共催といたします.農学部の非会員の方もぜひご参加下さい.


西洋史学としての<歴史気候学> -研究の現状と課題-

永田 諒一 氏(岡山大学文学部)

日時:2005年10月25日(火)午後5時30分~午後6時40分
場所:岡山大学文学部会議室(文法経1号館3F)

最近,歴史学界に「歴史気候学」という分野が成立しつつある.歴史上の各時代が暖かかったか,寒かったかを調べて,それを歴史解釈の一要因に加えようという企てである.
しかし,研究の現実は,多くの困難を抱えている.例えば,1.昔の時代の気候を確定するためには,自然科学の気候学の知識と成果を借用しなければならな い.また,気候変化と人々の暮らしの接点にある事象として,作物生育の良・不良や,(ヨーロッパ・アルプスの)氷河の住居地への進出・後退などが知られて いるが,それらの分析も,作物栽培学や氷河学の助けを必要とする.
そして,なにより,2.現状では,歴史学研究としての方法論や論理が確定されていない.例えば,フランス革命の一因として,当時の寒い気候による農業不作がある<ようだ>とは言えても,どの程度に重要な要因なのかを決定するのは至難である.
今日は,西洋史,とりわけ,気候学から「小氷河期」と言われ,歴史学からは「危機の時代」と言われてきた16世紀後半から18世紀はじめに至る時期を例と して,研究の現状と課題を紹介したい.その際,とりわけ自然科学系の学兄諸氏には,有益なアドヴァイスをお願いできないかと考えています.


日本の異常気象および気象と音楽との関わり

加藤 内藏進 氏(岡山大学教育学部)・加藤 晴子 氏(くらしき作陽大学音楽学部)

日時:2005年9月9日(金)午後5時00分~6時40分
場所:岡山大学教育学部北音楽棟3Fホール

季節サイクルの切り口で見た気候システムの特性

東アジアでは,アジアモンスーンの影響により梅雨・秋雨など世界的にも独特な気候が見られ,しかも季節遷移過程も複雑です.従って,異常気象や,地球温暖 化などに伴う各地の気候変化の予測・解説のためには,「季節進行が奏でる『複雑なベース』の上に乗ったアノマリー」の理解が基本になります.また,季節サ イクルの微妙な違いも含めた気候特性の違いと生活・芸術文化との関わりも興味深い問題です.本講演は以下の二部構成で行います.

(第一部) 東アジア独特な季節進行のステップと異常気象
東アジアの季節サイクルのベースに関する特筆すべきポイントや,そのサイクルの上に乗っているが故に見られる,あるいは,本来の季節進行が歪められたような,異常気象に関する我々の研究室での解析結果をいくつか紹介します.

(第二部) 日本と比較したドイツの春の気候学的位置づけと古典派・ロマン派歌曲等に見られる春の表現について(気象と音楽との融合学習内容の開発へ向けて)
季節進行の中で見たドイツの『春』,特に『5月』の位置づけを日本と比較しながら気候学的に洗い直し,それを踏まえ実際の歌曲に見られる『春』の表現について検討した結果を,講演者によるソプラノ独唱を交えて解説します.


樹状細胞療法第1号のがん治療としての有効性

林 昭 氏(CI 林 免疫療法クリニック・同研究所)

日時:2005年7月13日(水)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館第1講義室

 BCG-CWS療法はもともと臨床主導の免疫療法として,アジュバント療法とかBRM療法など極めて曖昧な名前で呼ばれてきました.近年,自然免 疫系(Innate Immunity)の台頭,さらにその中心となる樹状細胞(Dendritic Cells)の役割が明らかになるにつれ,BCG-CWS単独療法は,樹状細胞療法そのものと考えられるようになりました.なお,BCG-CWS療法は, もともと故・山村教授(阪大学長)が,「がん治療については,基本は抗がん剤・放射線療法であり,免疫療法はあくまでも補助療法である」との考えの上で, 推進されていた療法です.しかし,筆者は,免疫機能の増進を優先させる,という考え方に立っています.この治療を開始した1974年以来,患者数は 1500人を越え,そのかなりの部分を我が国でも知名度の高い有力な医療関係者本人,またはその身内が占めています.この事実は,医療関係者自身がこの治 療の意義をすでに理解し始めたと考えても不思議ではありません.
 筆者の方法は,昨年(2004年)カナダのモントリオールで開催された国際免疫学会で,実用化樹状細胞療法第1号として正式に認知されました.な お,1994年,厚生省医薬品機構からの補助金を基に,主として肺がんを対象とするBCG-CWS単独免疫療法が計画され治療がなされました.2002 年,厚生省からの補助金がうち切られた時点において残された400人以上の患者のために,演者は免疫療法クリニックを設立しBCG-CWS単独免疫療法を 続けています.この方法について,演者の治療経験を中心にお話ししていただきます.1.治療効果の幅広さ,2.リンパ節転移を抑制する効果実態,3.患者 の生活の質の改善,4.副作用の少なさ,5.治療操作の簡便性,6.治療費の安さ,7.世界での認知状況,などについて解説されます.
 教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加ください.


人と自然にやさしい化学のモノ創り

酒井 貴志 氏(岡山大学工学部)

日時:2005年6月13日(月)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学工学部2号館1階B101教室

 化学は生活必需品や医療・健康が関係する科学・産業を水や空気のように無くてはならぬ存在として支えて来ました.しかし,今その活動が自然に受け 入れられる量的規模を超えつつあり,地球的規模で問題が出てきています.便利な生活を支える代償として,否応無く二酸化炭素(CO2)を排出し,その CO2の排出により地球の温暖化が引き起こされ,地球環境,生態系に様々な影響が出ています.
 1999年の「京都議定書」に従って政府が進めている「地球温暖化防止行動計画」では,CO2排出総量が2000年以降、概ね1990年レベルで安定化 するよう努めると宣言していますがその道は容易ではありません.本講演ではそれらの社会的な要請の下に,このかけがいのない地球上で人類が持続的に生存, 生活できるために,化学者がどのようにこの課題に取り組もうとしているのかの具体的な事例-生分解性プラスチックの合成,CO2の利用によるプラスチック の合成,超臨界CO2の利用,マイクロリアクターの開発等-を取り上げてやさしく解説し,あわせて演者らの固定化酵素,化学触媒の利用についても紹介して 頂きます.
 教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加ください.


義務教育未修了者の「教育を受ける権利」の保障について

有吉 英樹 氏(岡山大学教育学部)

日時:2005年5月19日(木)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階第1番講義室

 戦争や貧困,差別などによって,義務教育を修了できないまま大人になり,読み書きに不自由している人たちは,全国でいったい何人ぐらいいるので しょうか.10年ごとに実施されている国勢調査によれば,未就学者(「在学したことのない人,または小学校を中途退学した人」)の数は,2000年度では 158,891人となっています.
 自分の住所も名前さえも書くことままならない人たちの「教育を受ける権利」を少しでも保障していこうと取り組んでいる人たちのボランティア活動と,未就学の人たちの学習活動について,紹介して頂きます.
 教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加ください.


どうすれば大学生に成長してもらえるのか?-理科系教育に対する大学教員の模索-

高原 周一 氏(岡山理科大学理学部化学科)

日時:2005年4月22日(金)午後6時~7時
場所:岡山理科大学11号館ラウンジ

学ぶ意欲をなくした,学力が低下したといわれる(大学教員の思いこみ?)最近の大学生.大学教員が学生を教えるためには今まで通りの講義ではなかな かついてきてくれないのが現状です.「自分は何のため生きるのか?」など人間として成長するための「自分探し」を十分経験していない,コミュニ ケーションをうまくとれないなどといった弱点が見え隠れします.これまで,教養教育として取り組まれてきたこれら弱点の克服は,最近,専門教育の中でも非 常に重要な課題となっています.
 今回は,化学を専門としている高原さんに,化学を教えるということを通してどうやったら学生の多面的な成長を手助けできるかというテーマで話をしてもらいます.
 大学生に勉強してもらうために,おもしろいと思ってもらうために岡山理科大学の教員もいろいろ試行錯誤を繰り返しています.そういった大学教育の現状を知ってもらういい機会ですので教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加下さい.


ベンチサイドからベッドサイドへ-基礎医学研究から癌の早期発見・診断・予防に向けて-

岡 剛史 氏(岡山大学大学院医歯学総合研究科)

日時:2005年3月15日(火)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部第1講義室(1号館1階)

現在,生命科学は分子生物学を中心とする様々な技術の発展を背景に革命的に発展しつつあります.血液腫瘍医学の分野でも診断・治療技術の進歩に伴い 悪性リンパ腫・白血病の予後は病型によっては顕著な進歩がみられています.しかし,ある種の病型において,とくに病期の進んだ症例の予後は大変不良であ り,このような難治性リンパ腫・白血病をどのように扱うかは焦眉の課題になっています.演者は悪性リンパ腫・白血病の臨床病理学的特徴がどのような分子基 盤により成り立っているかを検討するためにcDNAマイクロアレイ及び病理組織マイクロアレイ等を用いた分子病理学的解析を行い,広範な悪性リンパ腫・白 血病の発症に関わる重要な遺伝子を同定しました.そして悪性リンパ腫・白血病の発症機構の解析を行い,その成果を応用し高感度・高精度に腫瘍細胞を検出す る方法の開発に成功しました.講演では発癌機構が現在どこまで解明されてきているかを概説するとともに,基礎医学研究の立場から,病気の早期発見・診断・ 予防にどこまで迫れるか,また生老病死を巡るこれからの医療の問題点・課題について考察される予定です.


考古学で解く古代の心

松本 直子 氏(岡山大学大学院文化科学研究科)

日時:2005年2月14日(月)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学文学部会議室(文学部1号館3階)

考古学者が人の心を考えるというと,よく驚かれたり不思議がられたりします.しかし、過去の人々の行動や作り出した物の形は,人が普遍的にもつ心の 働き(認知)によって左右される部分が多く,認知科学を取り入れた考古学の方法によってそれらを読み解くことが可能です.土偶はなぜあんな姿をしているの でしょうか?縄文の村のプランは何を意味しているのでしょうか?そして、どんな進化のプロセスが人の心の働きを作り出したのでしょうか?いま、日本でも注 目を浴びつつある認知考古学の第一人者として活躍されている松本さんの話を聞いて,原始・古代の心と物をサイエンスしてみましょう.
 教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加ください.


水と氷と油の統計力学

甲賀 研一郎 氏(岡山大学理学部・化学科)

日時:2005年1月17日(月)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学理学部11講義室(本館1階) (本館玄関を入って右側(北側))

氷の融点(例えば1気圧0℃)や沸点は本当に「点」なのだろうか?あるいは点のように見えて実は有限の「領域」なのだろうか?水と油はどのような理 由から「水と油の関係」になるのだろう?このような水(またはより一般に液体)に関わる身近な現象をいくつか取り上げて,それらが統計力学の問題としてい かに魅力的であるかについて,ご講演頂きます.教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加下さい.


ロボットをつくる -ロボットって何?,アニメにみるロボット,今の技術にできること-

衣笠 哲也 氏(岡山理科大学工学部・機械システム工学科)

日時:11月8日(月)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階第1番講義室

1996年12月,ホンダのヒューマノイド(人間型ロボット)P2が発表されて以来,様々なヒューマノイドに関する研究が盛り上がっています.P2 以前と比較すると完成度の高い2足歩行や見た目のスマートさ,多機能といった意味で,当時研究者に大きなインパクトを与えました.現在も,ブームといわれ るロボットですが,ホンダのASIMOやソニーのQrioが歩いているのを見るぐらいで,そもそも,ロボットってなに?,日本人は何でロボットの研究が好 きなの?今どんな研究がされているの?といった点についてあまり一般に知られていないことが多いようです.そこで,今回は,1)ロボットとはなにか?(由 来,定義),2)アニメに登場するロボットの紹介と分類,2足歩行技術を中心に,3)ロボットをつくるために必要な技術に関する最近の研究についてご講演 頂きます.教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加下さい.


酸素を作り出す植物の仕組み

沈 建仁 氏(岡山大学理学部・生物学科)

日時:10月26日(火)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階第3番講義室

藻類や植物は光合成という反応で光エネルギーを利用して水を分解し,絶えず酸素を作り出しています.この酸素は動物や人間が生活していくうえで欠か せないものであり,地球上生命の進化に多大な影響を及ぼしてきました.光合成反応において酸素を作り出している実体は,光化学系IIと呼ばれる膜タンパク 質複合体であり,本セミナーでは光化学系II複合体の立体構造解析を通して植物が酸素を作り出す仕組みを分子レベルで解説していただきます.教職員,院 生,学生,市民のみなさまふるってご参加下さい.

連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


謎解き口腔機能学:キンさんギンさんは,歯がないのにどうして長寿を得たのか?

岡崎 好秀 氏(岡山大学医学部・歯学部附属病院・小児歯科)

日時:7月13日(火)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階第2番講義室

ここ10年,口腔ケアや摂食嚥下に対するアプローチが注目を浴び,口腔機能対する認識が見直されています.そこで今回は,口にまつわる様々な“ふしぎ”についてお話し頂きます.
1:キンさんギンさんは,歯がなかったのにどうして長寿であったのか?
2:阪神大震災,消防士が2時間かけて探したものは?
3:神戸の避難所で,ハンバーグが大量に捨てられてあった理由は?
4:どうして不潔な口腔により,肺は誤嚥性肺炎を起こすのに口は平気なのだろう?
5:ある産婦人科病棟で手術後,早くガスを出すためにとった方法とは?
6:耳の穴を覗くと,痴呆がわかる?
7:これこそ眉ツバ!養生訓,うがい後の湯がある薬に?
8:ヒトの体,自分の意志で最後まで動く筋肉とは?
9;口とインフルエンザの不思議な関係
10:睡眠時無呼吸症候群と口の機能
11:赤ちゃんが発する最初の意味のある言葉とは?
エピローグ:健口から健康,そして健幸へ.

連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


スーパーサイエンスハイスクールの取り組みと大学との連携について

進藤 明彦 氏(岡山県立岡山一宮高校教諭)

日時:6月14日(月)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階第2番講義室

今回は,一宮高校教諭の進藤氏に,現在同校で行われているスーパーサイエンスハイスクールとしての様々な取り組みと高校と大学の連携について,話題 提供をして頂きます.同校に1999年度に新設された理数科は,知識偏重の受験対策中心の教育ではなく,将来科学・技術分野で活躍する夢を持った生徒を受 け入れ,その能力を伸ばすため,大学との連携も視野に入れた教育を行っています.2002年度には,文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールにも指定 され,基礎学力を重視しながら,大学教官が高校の授業で講演を行ったり,高校生が大学の研究室で研究指導を受けるような授業により,先端科学に触れ,興 味・関心を引き出し,生徒の主体的な研究活動を通して,論理的思考力や創造性を伸ばす教育を実践しています.こうした取り組みは国内外から注目されてお り,進藤先生ご自身もこの度米国で開催された国際学生科学フェアにおいてExcellence in Teaching Awardを受賞されました.このフェアの模様についてもご紹介頂く予定です.教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加下さい.

連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


学びの一歩から自立の一歩へ-大学で学生が主人公になる事例と工夫の紹介-

和田 寿博 氏(愛媛大学法文学部)

日時:3月15日(月)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館1階第1番講義室

キャンパスには講義やゼミに積極的で,学生文化を活性化させる役割をもつと言う意味で,大学の主人公ともいえる魅力的な学生がいます.こうした学生 が大学での学びを一層深めれば大学は活気づくし,学生時代の学生としての活動を生かして,自立した人としても活躍して欲しい.しかし,そうした学生になる ためには,受験勉強とは異なる「学びの一歩」を踏み出すことが必要ではないでしょうか.そこで学生が大学で「学ぶ喜び,人と関わる楽しさを実感し,社会と の切り結びや自立への挑戦」を試みている事例=「学びの一歩と自立の一歩」と大学教員として演者が試みている工夫を紹介されます.学生にとっての大学での 学びの意味と意義を確認することから,大学の理念,大学生活の目標,大学と社会との関係,大学を卒業した後の人生について問題提起していただきます.教職 員, 院生, 学生, 市民のみなさまふるってご参加ください.

参考図書:『学びの一歩:大学の主人公になる』(新日本出版社)和田寿博著

連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


疫学と蓋然性と,医学における因果関係-医学ニュースから環境問題まで-

津田 敏秀 氏(岡山大学医歯学総合研究科・社会環境生命科学専攻)

日時:2月10日(火)午後5時30分~6時30分
場所:岡山大学農学部1号館第1番講義室

因果関係の問題は科学において,重要な話題となってきました.医学においても同様です.疫学は医学における因果関係について,定量的な判断を可能に する方法論として発達してきました.定量的とはいわゆる「蓋然性」の問題も含みます.「この薬は効くのか?」,「この手術は有効か?」,「この環境汚染は 人体への影響がどのくらいあるのか」,「この仕事についている人の病気は職業病と言えるのか?」,「この遺伝子やこの蛋白はこの症状とどのように関連して いるのか?」など,医学に関する様々な因果関係についての問いは疫学という方法論に基づいて分析されてきた結果を基に論じられます.そのような証拠に基づ いた医療のことを今日ではEBM(Evidence Based Medicine)とも呼びます.疫学は,薬や食品の安全性についての研究や,感染症・食中毒の集団発生の原因究明にも応用されています.このような疫学 の話を中心に概論してもらいます.医学は生物学の応用の一つですので,生物学系の研究者や生物統計学に関心のある皆さんにもご興味を持っていただけるので はないかと思います.教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加ください.

参考図書:「市民のための疫学入門」(緑風出版)津田敏秀著,ISBN4-8461-0311-0

連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


キャッサバ育種から見た世界の植物遺伝資源の利用と濫用

河野 和男 氏(神戸大学農学部・附属食資源教育研究センター)

日時:12月2日(火)午後5時00分~6時30分
場所:岡山大学農学部3号館4階大会議室

世界の主要作物の起源は殆ど熱帯・亜熱帯です.それは同地域に豊かな生物多様性があり, 先人が苦労を重ねて作物に作り上げたからです.その結果,熱帯・亜熱帯諸国は遺伝資源大国,温帯圏諸国は遺伝資源小国となりましたが,遺伝資源を利用して 知的所有権を設定するのは温帯圏の先進国であり,これに対抗して熱帯の発展途上国が遺伝資源を囲い込むという構図が生じています.このために,育種事業で 遺伝資源を自由に利用できなくなる方向に向かっており,人類の福祉に逆行するとの懸念がもたれています.本来,遺伝資源は人類共有の文化資産であり,これ を人類の福祉に役立てるのが科学者の務めです.今回の講演は,国際研究所(CIAT)で熱帯作物キャッサバの育種を担当され,小農や貧農とされる人々に育 種の成果を30年近くにわたって届けてこられた演者の報告です.教職員,院生,学生,市民のみなさまふるってご参加ください.

連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


エネルギーの未来を考える-太陽光発電・市民共同発電のレポート-

中西 卓 氏(おかやまエネルギーの未来を考える会)

日時:10月9日(木)午後5時30分~6時45分
場所:岡山大学農学部3号館4階大会議室

街から村までどこを歩いても見かけるようになった太陽光発電を,市民の立場から体験にもとづいた話をして頂きます.「地球温暖化防止のために,自然 エネルギーを」との仲間が共有する思いを,市民共同発電のかたちにしようと話が始まり,NPOおかやまエネルギーの未来を考える会(略称エネミラ)は,昨 年夏に岡山市立保育園で市民共同発電所を実現しました. 関係先との折衝,資金,技術などの体験談と1年間の発電実績について報告して頂きます.また,わが国のエネルギー政策の問題点などの社会的背景や,全国に 広がる市民共同発電のネットワーク,中西氏らの自然エネルギー利用の普及啓発活動についてもお話し頂きます.みなさま,ふるってご参加ください.

連絡先:世話役 白井浩子 岡山大学理学部附属臨海実験所 TEL 0869-34-5210
  連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


人口が語る新しい古代史

新納 泉 氏 & 今津 勝紀 氏(岡山大学文学部・歴史文化学科)

日時:9月1日(月)午後5時30分~6時50分
場所:岡山大学文化科学研究科棟2階共同研究室

人口の変動は,歴史の動きを根底から決定づける重要なファクターでありながら,そのアプローチの難しさから,日本ではこれまで本格的な研究が定着し ていませんでした.新納氏と今津氏らは,コンピューターによる解析やシミュレーションを通じ,過去の人口変動とそれが歴史に与えた影響について,共同研究 を進めておられます.人口の変動とその調節のしくみが,社会のシステムをどのように作り,変えてゆくのか?戸籍の解析から見えてくる古代社会の驚くべき実 態とは?お二人の語りの中から,新しい歴史学・考古学の姿や人類の未来像が浮かび上がってくることでしょう.みなさま,ふるってご参加ください.

連絡先:世話役 松木武彦 岡山大学文学部 TEL 086-251-7457
連絡先:日本科学者会議岡山支部事務局 稲垣 賢二(岡山大学大学院自然科学研究科) Tel&Fax (086) 251-8299


総合技術としての合鴨農法の魅力

岸田 芳朗 氏(岡山大学農学部・附属山陽圏フィールドサイエンスセンター)

日時:7月7日(月)午後6時~7時
場所:岡山大学環境理工学部棟4階422号室(環境管理工学科総合演習室)

皆さんは,アイガモ農法をご存じでしょうか.アイガモを除草に活用して安全・安心な米作りを実現する大変ユニークな取り組みです.最近,テレビでも とりあげられ田圃を泳ぎ回るアイガモが映し出されたりしています.先頃,朝日新聞社主催の第4回「明日への環境賞」にアイガモ農法に関わる農家や研究者, 消費者からなる集まりである「全国合鴨水稲会」が選ばれました.岸田さんは早くからアイガモ農法の技術開発,さらにその普及に携わってこられ,現在は「全 国合鴨水稲会」の事務局を担って活躍されています.この機会にぜひお話を伺いたいとお願いしました.ふるってご参加下さい.

連絡先:世話役 品部 義博(岡山大学環境理工学部)TEL (086)251-8884